アーカイブ

恋をするとひとは美しくなる

恋をするとひとは美しくなるという。それは、相手にとって自分がいい人間に見られたいと努力するから。しかしその恋が自分の思うようにいかないと鬼の顔になり、悪魔の顔になり、相手への復讐を計る。不倫の恋をするひとたちは、恋をしていれば邪魔者は省くのは当然だと言わんばかりに相手の配偶者に不幸を強いる。恋は、恋をしていい相手と、恋をしてはならない相手を素早く見極めるところから始めてほしい。近松門左衛門は、西欧のシェイクスピアやモリエールに匹敵する大劇作家であり、日本の誇りだと思っている。彼は武家であったが、武家がいやで浄瑠璃作家になり、恋に悩み、恋に殉じて死んだ男女の心中物を多く書いたと言われているけれど、その冴えた人間観察の眼に、果して、心中したから、一緒に死んだから、二人は本当の恋をしていたと言えるだろうかという批判があったのではないかとよく思わされることがある。何故なら、初めに書かれた『曽根崎心中』にしても、よく考えたら、何も死ななくてもよいものをという印象が濃いし、『心中万年草』も、何故簡単にすぐ死のう死のうとするのか。このひとたちには何か性格的に欠陥があるのかと思わされることが多く、二人で死んだから、これが恋だなどとはとても思えないのである。